気持ちのいいチョップの交換日記

気持ちのいいチョップの2人が交換日記をします。

ヨーロッパ滞在記3日目(イギリス)

5月30日(木) 晴れ

 

今日も朝の6時頃に目が覚める。太陽は既に昇っている。ヨーロッパの夏は極端に夜が短い。窓から肌寒い空気が部屋に入ってくるので、閉めようと窓に近づくと外には半袖の人がちらほら歩いていたよ。

 

でかシャワーヘッドで汗を流し、軽く身支度を済ませて朝食の会場に向かう。古くからある建物をリノベーションしたようなホテルなので、毎朝英国の趣を浴びながら廊下を歩ける。年季の入った絨毯、装飾されたドアや階段の手すり。白を基調にしたそれらはいかにも洋館然としていて嘘みたいに感じてしまう。不気味の谷に陥ってしまったみたい。

 

今日から岡本くん達と同じゲストハウスに泊まるため、11時にはホテルをチェックアウトしなければならない。

ありったけの学習能力を振り絞り、朝食の量を調整する。皿3枚とコーヒー2杯で自分のお腹と手を打つ。部屋に戻って荷物をまとめ、無事にチェックアウト済ませ、大荷物を抱えたまま地下鉄に乗り込む。目指すはセント・ジョンズ・ウッド。

3日目ということもあり、地下鉄はわりとスムーズに乗こなしGoogleマップの予定時間からさほど誤差なく到着することが出来たよ。あ、そうそう小川くん。海外の交通機関は時間通りに中々来ないと聞いてはいたのだけど、遅れるだけでなく、まさか早く来すぎてしまうこともあるとはちょっと想像だになかったよ。時間通りに着いても5分前に出発してたり、時間はあくまでも目安という感じが僕の性には合ってたよ。

 

セント・ジョンズ・ウッドはとても穏やかなエリアで、木々とハイソな住宅が並んでいた。記念日か何か分からないのだけど、駅付近で真っ赤な軍服に勲章をたくさんつけたおじい達が優雅にうろついていたよ。ゲストハウスへの道のりを調べようと佇んでいたら、一人のおじいがこちらに近寄ってきてさ。胸につけた勲章を震えた腕で僕にみせてくるのね。その姿は可愛らしくもあり、少し憎らしくもあったよ。いくばくかのコミュニケーションを取っていたのだけど、僕のヒアリング力ではちょっといかんともしがたくて。遂にはアイムジャパニーズと実質ギブアップ宣言をしてしまったよ。すると、おじいはゆっくりとおじいの群へと戻っていった。あのおじいは何を僕に語っていたのだろう。少しだけおじいに思いをはせてゲストハウスに向かう。

 

道すがら軽く轢かれかけたが無事にゲストハウスに着き、岡本くんと中村さんと合流を果たす。

ゲストハウスは寝室が2部屋にキッチンルームとリビングルーム。トイレとシャワールームは別という中々な快適空間でテンションが上がる。挨拶もほどほどに劇場街へと繰り出す。今日は昼にプリンス・エドワード劇場でアラジン、夜にクイーンズ劇場でレ・ミゼラブルと中々盛りだくさんな1日。

劇場へは赤のカラーリングに2階構造で有名なロンドンバスに乗り向かったよ。ベーカーストリート通りを横目に劇場へ。劇場の前は平日にも関わらず大勢のお客さんが並んでいて、大にぎわいだったよ。たどたどしい英語でなんとか受付を済ませて劇場の中へ。ダークブラウンを基調にした華やかな渋さというか、趣の強い劇場だったよ。親子連れが多く、客席は中々活気づいていた。イギリスで観るはじめての舞台。周りの子供達に負けず劣らずソワソワしてしまったよ。

開演時間が訪れ、前ぶれなく照明が溶暗していく。劇が始まる。ジーニーが登場し軽やかな前説でお客さんのボルテージをあげていく。音楽が鳴り、幕が開く。きらびやかな衣装にバザールの舞台装置。テンションが一気にあがる。アラジンと3人の仲間のシーンで始まって、そこからノンストップでエンターテイメントがギュウギュウ詰まっていたよ。何より声が抜群に素敵。

特にアラジンがジニーと出会う洞窟のシーンは圧巻も圧巻だった。アドレナリンが毛穴から出そうだったよ。

僕、終始子供と一緒にケラケラ笑っていたね。舞台装置も本当に凄くて。舞台の質量が凄かった。そして、その圧倒的な質量のものが目の前で動いたり変わったりすることに心を揺さぶられまくったよ。感動で呆けてしまった。

終演後、劇場の座席下に散らばっていたマーブルチョコレートが愛おしかったよ。なんというか劇場が日常に溶け込んでいるというか、自分の生活の中だけでなく、大勢の生活に劇場が街に当たり前のように含まれているのがとても新鮮で。1つの作品を同じ劇場でずっと大勢の人に毎日の様に上演する、ショウビジネスとしての演劇の凄みを感じたよ。

そうそう、小川くん。ロンドンボックスオフィスというサイトがあってね。僕も岡本くんに教えてもらったのだけど、このサイトでチケットを買うのがとても楽で良いと思うから是非おすすめするよ!

 

 夜のステージまでの空いた時間に街をぶらり。ロンドンはとにかくパブが多い。右にパブ、左にパブ、行けども行けどもパブばかり。しかも、どのパブにも人がわりと溢れている。

 

 大通りの方に出てみると、どこからかカッコいいギターの音がしてきたのでふらりと音の鳴るほうに向かってみた。するとゆるやかな人混みに囲まれて、交差点の角に流しのエレキギター弾きがいた。めちゃくちゃカッコいいギターで思わず立ち止まって体を揺らしていたよ。何よりも良かったのが5才くらいの女の子がギター弾きの前でずっと踊っていてさ。それが本当に楽しそうで。素敵で。僕がこれまで見た街角の風景の中でもとびっきりのものだったよ。喜びに溢れていた。 

 

夜はレ・ミゼラブル。大勢の人で賑わう劇場を見ているだけでテンションがあがる。荷物検査をうけ劇場内へ。スクリーンいっぱいに映されるモノクロの少女。照明がめちゃくちゃ渋い。回るステージにとてつもない物量の装置。歌も演奏も役者も良いとしか言えないものに溢れて、頭が沸く。終演後、スタンディングオベーションの波にのまれてクタクタのヘトヘトのデロデロになりながら外に出る。さすがにもう日は暮れていたけど、劇場の外には派手なデコチャリ人力車が多数待ち構えていたよ。各々のデコチャリからレ・ミゼラブルサウンドトラックがガンガン流れていて、劇の余韻に浸る人々を完全にロックオンしていた。商魂たくましさがデコチャリ漕ぎ手の笑顔に出てたよ。

人波をかき分けて地下鉄へと向かう。地下鉄は地上の賑わいが嘘に思えるくらい静かで心地よかった。

無事にゲストハウスに着き、リビングルームで岡本くんや中村さん、他の日本人旅行者の人達とお喋り。 気付くと深夜2時。時間を意識したとたんに眠気がおそってきた。

 

寝室にいき、2段ベッドをえっちらおっちらのぼって横になる。今日も良い1日だった。