気持ちのいいチョップの交換日記

気持ちのいいチョップの2人が交換日記をします。

ヨーロッパ滞在記(イギリス) 1日目

5月28日(火) 雨

 

出国当日。生憎の雨。前日には台風や地震、建物の老朽化を理由に今住んでいるところが年内で賃貸契約出来なくなるという通知が来たりと、現実に首根っこを掴まれちゃって少しえずいてしまったよ。そうは言っても、もう飛行機も宿もとってるし、胸もそこそこ高鳴ってる。なんとか気合を入れてタクシーを呼んでひとまず京都へ。

 

イギリスへ向かうべく京都駅裏の空港バスに乗り込む。スーツケースとリュックサックにたくさんの荷物、小脇にお弁当のサンドイッチを挟んで。昨日、寝ずに諸々の準備をしていたからバスの中ではグッスリ眠りこけてしまったよ。

 

空港で手持ちのお金を外貨に変えたり、手荷物を預けたりと諸々の準備を済ませて出国審査のゲートへ向かう。初めての海外。それもヨーロッパ。文字でしか見たことのない場所へ身を投げ出してみる不安やワクワクを改めて感じる。僕は一体何を思うのだろうか。そんなこんなをゴチャゴチャ考えてたら、身体検査に引っかかってしまったよ。

真顔で寄ってきた職員さんの顔が今でも忘れられない。体より先に顔がこっちに向かって来て、どうしたら良いか分からず身がすくんでしまったよ。その場で僕は言われるがまま大人しく両手をあげ、腰につけたままだったポーチを含めて「駄目だよ」と怒られながら思った以上に所持したままだった物たちをトレイに置き再度身体検査を受けた。

 

早速、何やってんだかの洗礼を受け てしまい中凹みしてしまったよ。異国で職員さんに詰め寄られるよりも自国で詰め寄られる経験をしといて良かったとポジティブに捉え直して、飛行機にのったよ。

飛行機では思ったよりも手厚い待遇で、出国審査で受けたショックを十分に癒やし、本丸、中々入国させてくれないで有名なヒースロー空港へ向けて英気を養ったよ。韓国の航空会社だったこともあり、機内で見れる映画の字幕は9割方ハングル。日本語のものがスパイダーマン:スパイダースしかなくて、割と消去法的に選んで見たのだけど....。とても面白かったよ!集い、別れるというヒーロ達の姿に思いをはせたよ。タイムレンジャーを少し思いだした。

そんなんこんなで、うだうだと寝たり食べたりもぞもぞと時間を過ごしてヒースロー空港。飛行機では外の風景が全く見えない席にいたため、これから見る風景に思いをはせながら飛行機の外へ、いざ。という気持ちだったのだけど、流石に飛行機場の風景はよく見るそれで、搭乗者の人達もアジアの人達ばかりなので、ビビットな感情はさほど沸かなかったよ。

だけど、肌で感じる風は少し肌寒く乾いてて、日本で早めに訪れていた夏の風とは違っていた。

 

そんなことをぼんやりと考えながらロビーへ。流石にここはアジアだけでなく色々な人種の人達が溢れていて、自分の話す言葉や見た目がマイノリティなのだと身が引き締まる気持ちになった。話す言葉や見た目でくくってしまうのはとても大雑把で、1人の人であるという大前提をぼんやりさせてしまう事だとは思うけど、不安にかられて気持ちも体もすくんでしまったよ。 

ここで色々と考えてしまうと審査にまた引っかかってしまうと気持ちと頭を切り替え、入国審査を示すゲートへ。パスポートとスマホ、泊まる期間、場所、目的、私は誰であるのかそれらを何度も頭で確認しながら、口ではサイトシーイング、サイトシーイング、サイトシーイングと切り札単語を繰り返す。

列に並んで自分の順番が来るのを震えながら待つ。思った以上のスピードで列が進んでいき、職員さんに促されるまま機械にパスポートをかざしてカメラの前で顔認証をする。ゲートが開き、前へと進む。案内板に書かれてある英語をなんとなく読み、預け荷物が到着している場所へ歩みを進める。無事に荷物を受け取り、出口へ。出口を出ると、ショップやリラックスした人達がたくさんいるロビーに出た。外へと開かれた自動ドアでは人々が自由に往来している。

 

外に出れる?入国審査は?色んな人達から聞く対面式の圧迫入国審査はどこ?そういった疑念が頭によぎり続ける。全く分からない。何かのはずみで僕はイギリスに入国しており、ここから一歩でも外に出れば不法入国者として追われる身になってしまうのではという思いにとらわれてしまい、30分程この場所でウロウロしてしまう。

しかし、流石にお腹も空いてきたし、周りの視線も気になって来たので思い切って外に出る。地下鉄直結だったのと、地下鉄職員さんが親切に教えてくれ、さほど迷うことなく地下鉄に乗り込む。

小川くん、イギリスの地下鉄は凄かったよ。映画で見る風景だった。異国への思いが沸々と興奮へとシフトしていく。ホテル最寄りの駅に着き、案内板にしたがって地上に出る。

見知らぬ建物、見知らぬ人、21時を過ぎてもなお太陽が沈みきらず仄明るい街、冷たく乾いた風。僕を知らない場所。僕の知らない場所。そこに1人。頭がポーっと沸いて、未だ知らぬ事への途方もない興奮を感じる。知らない事を否定しないで受けとめることが出来て良かったと、おさまらない興奮そのままに歩く。今日のこの気持ちを出来るだけ持って生きたい。

 

ホテルは思ったよりも近く、チェックインを片言の英語でなんとかこなし部屋に行く。軽い荷解きをし、窓から外を眺め、沈まない太陽をぼんやりと思いながら寝る。

 

小川くん、僕は今ヨーロッパにいるよ。今のところとてもいい塩梅だよ。